長崎の伝統野菜と循環型農法を学ぶ収穫体験|竹田かたつむり農園の冬の収穫会
2025年3月に「オーガニックビレッジ宣言」を発表した長崎県の雲仙市。長崎県内では、同じ島原半島に位置する南島原市とともに、自治体として有機農業の推進に力を入れています。
そんな雲仙市にある「竹田かたつむり農園」は、全国的にも珍しい「有機農法による種取り」まで行う農家です。
先日、毎年開催されている冬の収穫会に参加してきました。
循環型農法の現場で土に触れ、地域に根づく野菜の生命力を体感する、学びと気づきに満ちた体験を、現地の空気感とともにご紹介します。
※取材は2025年12月
掲載日:2026年01月13日
ライター:Miyako
竹田かたつむり農園について
竹田さんご夫婦が営む「竹田かたつむり農園」は、農薬や化学肥料を使わず、固定種・在来種の野菜を中心に約60種類もの多品目を栽培し、毎年自家採種を行っています。
「かたつむり」という農園名には、いくつもの思いが込められています。
自給的な暮らしを大切にしながら、農業もかたつむりのようにゆっくり丁寧に行うこと。
殻の螺旋構造に象徴される、生命の循環や持続性。
さらに、雌雄同体であるかたつむりの姿から、男女平等を意識しながら、農園内では性別による役割分担に囚われず、責任やプレッシャーの偏りを減らす取り組みを実践しています。
有機農業を実践している農家は日本全体の約1%と言われ、その中でも種を自家採取して育てている「種採り農家」はほんの一握り。竹田かたつむり農園は、大変貴重な存在です。
収穫だけじゃない、食と種を学ぶ体験の場
そんな希少な種取り農家の実際の畑で、自然と地域とともに育んできた野菜を、ストーリーとともに学びながら収穫できる機会が「収穫会」です。
2025年度の冬の収穫会は、12月・1月・2月に、平日と週末の複数日程で開催されています。(2025年度は申し込み終了)
収穫できる野菜は月ごとに異なり、その年の農作物の出来具合によって開催日数も変わってきます。
毎年、竹田かたつむり農園のInstagramで開催告知があり、参加申し込みは、アカウントのDMかまたはメールで受け付けています。
農園の畑は、雲仙市国見町と島原市有明町の2か所にあり、今回の収穫会は有明町の畑で行われました。
当日は、一人参加の方やご夫婦、小さな子ども連れのご家族など、さまざまな参加者が集まりました。毎年欠かさず足を運ぶリピーターの方、SNSや口コミを通じて初めて参加された方、それぞれが和やかな雰囲気の中で収穫体験を楽しんでいました。
体験時間はおよそ2時間。実際に畑へ入り、自分の手で収穫した野菜を持ち帰ることができます。
しかし、この収穫会は単なる「収穫体験」とは一味違います。
日常生活ではなかなか触れることのない、固定種・在来種(伝統野菜)や種のこと、栽培方法などを学べる、食育とサステナビリティの学びの場でもあります。
知ってほしい。種のこと、伝統野菜のこと
収穫の合間に、竹田さんから野菜や種についてのお話を聞くことができました。
普段何気なく口にしている野菜や「食」の背景について、理解を深める貴重な時間です。
現在、日本の多くの農家では、毎年種苗会社からF1品種(一代交配種)を購入しています。そして、その多くが海外からの輸入に頼っているのが現状です。
また、化学肥料も輸入に依存しているため、もし輸入が停止する事態となった場合、食料生産に大きな影響が出る可能性があります。
一方、自家採種を続ける固定種・在来種の野菜は、その土地の風土を記憶し、地域に適応しながら育っていきます。これらは「伝統野菜」とも呼ばれ、地域の食文化や郷土料理とも深く関わっています。手間暇がかかり、現在の経済システムとは合わないものの、おいしさも生命力も違います。
「野菜を育て、種をつなぐことは、命をつなぐこと」
竹田さんの農業は、未来の子どもたちへ命のバトンを渡す活動そのものです。
栽培方法も特徴的で、農薬や化学肥料を使わないばかりか、水やりもなし。月の満ち欠けや自然の力を活かして育てています。
虫や雑草も敵ではなく、共に生きる存在。
人間や動物と同じように、農作物も子孫繁栄を繰り返し、種に記憶を残しながら土地の中で循環していくのです。
自分たちの手で収穫!畑で出会った野菜たち
持ち帰り用の段ボールを受け取り、畑に入って収穫スタート!
まず収穫したのは、4種類から選べるじゃがいも。白や赤など、見た目も個性豊かです。写真に写っているのは「タワラアルタイル彦星」という、皮に赤い斑点模様のある希少な品種のじゃがいもです。
続いては、大村市の伝統野菜「黒田五寸人参」。
一般的な人参より甘みが強く、人参が苦手な子どもでも食べられることが多いそう。
この日はその場で試食もあり、子どもたちは洗ったばかりの人参にかぶりついていました。
農薬を使っていないため、土を落とせば皮ごと食べられるのも魅力です。
人参の収穫後には、竹田さんお手製の紙芝居で、雲仙の伝統野菜「雲仙こぶ高菜」が紹介されました。
雲仙市吾妻町には、長年にわたり在来野菜の種取りを続けてきた第一人者の岩崎政利さんがおり、竹田さんも農業を始めるにあたって岩崎さんから種取り農法を学んだ一人。その岩崎さんが、消滅しかけていた雲仙こぶ高菜を地域の仲間とともに復活させた物語を、紙芝居を通してわかりやすく伝えてくれました。この話は、これまでに100回以上語ってきたそうです。
種をつなぐことの大切さを、あらためて実感する時間となりました。
その後は、雲仙こぶ高菜をはじめ、畑にある葉物野菜や根菜類を自由に収穫。
参加者それぞれが畑に散らばり、思い思いの野菜を手に取りながら、収穫の時間を楽しんでいました。
※岩崎政利さんの在来野菜の種取りについてはフリーマガジン「SとN」第2号でも紹介されていますので、ご覧ください。
私のお気に入りは、丸くて赤い見た目が愛らしい「長崎赤かぶ」。
以前、雲仙温泉で開催されたONSENガストロノミーウォーキングで初めて食べたのですが、ソテーして軽く塩を振るだけのシンプルな味付けでも、とってもおいしい長崎県の伝統野菜です。
ほかにも、諫早四月大根や雲仙赤紫大根といった長崎県の野菜たち、さらには滋賀県の伝統野菜・日野菜かぶなど、普段はなかなか出会えない野菜が畑いっぱいに並びます。
畑にはそのほかにも多様な品種の野菜が育っており、気になるものがあれば竹田さんに質問しながら収穫できるのも、この収穫会ならではの魅力。
珍しい野菜との出会いを楽しみながら、自分の手で選び、収穫してみてくださいね。
野菜の見え方が変わる体験
畑で土に触れ、自分の手で野菜を収穫する体験。
スーパーに並ぶ野菜は、葉や根が切り落とされ、包装された姿しか見ることがないかもしれません。しかし収穫会では、土がついたまま、葉付きのまるごとの野菜を持ち帰ることができます。
私も大根や人参、かぶを葉っぱつきで持ち帰り、余すことなく料理していただきました。
収穫したばかりの冬野菜の美味しさを自宅で味わうことも、体験の一部。レシピもいただけるので、帰宅後も楽しみが続きます。
五感を使った体験を通して、野菜をより身近に、そして深く知ることができる竹田かたつむり農園の収穫会。土に触れ、野菜の背景や種の物語を知ることで、日々の食への向き合い方が少し変わるかもしれません。
機会があれば、ぜひ現地を訪れ、循環する農の現場を体感してみてください。
PickUp
収穫会について
冬の収穫会は毎年、竹田かたつむり農園のInstagramで開催告知があり、参加申し込みは、アカウントのDMかまたはメールで受け付けています。
収穫会以外にも、農園ツアーや見学、種取り体験など、少人数から団体まで受け入れを行っているそうです。
この記事を書いた人
o#ナガサキタビブ 部員(公式ライター)
長崎の魅力を県外や海外の方に知ってもらいたい!
長崎県大村市出身。インバウンドを得意とする旅のコンテンツクリエーター。海外・東京などでの生活を経て、2018年の暮れに長崎にUターン。その後、長崎の歴史や文化を学び直し、その魅力にはまる。個人のSNSやフリーランストラベルライターとしても複数メディアで長崎の魅力を発信中。

