へトマト(国の重要無形民俗文化財)に参戦! 五島市下崎山地区に伝わる奇祭の楽しみ方。
毎年1月の第3日曜日に開催される五島市の下崎山地区に伝わる伝統行事「へトマト」。
白浜神社を起点に、羽根つきや奉納相撲、玉せせり、綱引き、そしてわら草履奉納まで、次々と展開される迫力のある伝統行事に圧倒されます。
「奇祭」と呼ばれる、独特で風変わりなお祭り「へトマト」の楽しみ方をご紹介!
掲載日:2025年12月16日
ライター:RuRi
五島の冬を告げる伝統行事
五島市の下崎山地区に伝わる「へトマト」は、国の重要無形民俗文化財に指定されている由緒ある伝統行事です。
毎年1月の第3日曜日に開催されます。
白浜神社へ向かう道中には、案内板がいくつも立っているので迷うことなく、お祭りムードに引き込まれます。
子孫繁栄や無病息災を祈るこの行事は、白浜神社から三叉路、さらに山城神社へと続く道中で行われます。
無料の振る舞い「ぜんざい」で心も体も温まる
白浜神社の境内に着くと、甘い香りが漂ってきます。
無料で振る舞われる「ぜんざい」です。冷たい海風が吹き抜ける冬の島で、温かいぜんざいは最高!
地元のお母さんたちが手渡してくれる優しさが、心まで温めてくれます。
熱気あふれる「奉納相撲」
行事の始まりは、「奉納相撲」からです。
小学生・中学生・成人の三部構成で、まずは小学生の取り組みから。
まだ小さな身体で一生懸命ぶつかり合う姿に、つい頰がゆるみます。
中学生、そして大人と進むにつれ、土俵の空気が一気に引き締まり、迫力満点!
勝敗が決まる瞬間には、観覧者全員が思わず声をあげてしまうほどの盛り上がりです。
ふんどし姿の競技者たちは寒そうですが、会場は観客から飛ぶ温かい声援に包まれていました。
新婚女性による「羽根つき」
白浜神社で奉納相撲が終わった後は、三叉路へ移動。
御幣持ちの行列がゆっくりと進み、羽子板を持つ方々が続きます。
そして始まるのが、子孫繁栄を祈願して行われる、新婚女性による「羽根つき」です。
驚いたのは、なんと 酒樽の上 に乗って羽根つきをすること!
足元が不安定な中でも一つ一つ丁寧に羽根を打つ姿は美しく、周囲からのあたたかい声援と笑い声が混じり合い、穏やかな雰囲気が広がっていました。
こんな羽根つき、他ではなかなか見られませんよね。
勇ましさ全開の「玉せせり」
羽根つきのあと、同じ三叉路で行われるのが「玉せせり」。
藁で作られた玉を紅白に分かれて投げ合う行事で、ふんどし姿の男性たちの力強さに圧倒されます。
玉が宙を舞うたびに観覧者の歓声が上がります。
迫力満点のぶつかり合いに圧倒されます!
観客もみんな真っ黒!
「へトマト」の醍醐味は何といっても、観客もみーんな真っ黒になっちゃうところ!!
ふんどし姿の男性たちが近づいてきたと思ったら、一瞬で真っ黒のお顔に!
これが「ヘグラ」と呼ばれる煤(すす)で、厄除けや無病息災を願って塗られるんだそうです。
慣れた様子で笑顔のまま顔を差し出す方もいれば、逃げ回って追いかけっこする方も…。
お祭りに参加する全員が巻き込まれていく感じが、なんとも楽しい!
気づけばわたしの顔にも黒い煤が!奇祭の一員になれたんだ!と嬉しい気持ちになります。
力勝負の「綱引き」
「玉せせり」が終わると、同じ三叉路で次は「綱引き」がはじまります。
陣地を替えながら三回勝負で行われます。
全身ヘグラで真っ黒の男性たちが力強く綱を引き合い、顔が真っ黒の観客が周りから声援を送り、会場全体がひとつにまとまります。
わら草履に担がれる衝撃体験「わら草履奉納」
綱引きの熱気が冷めないまま、クライマックスの「わら草履奉納」へ。
三叉路から山城神社まで、大きなわら草履を担いで進んでいきます。
わら草履の上に女性が次々と担ぎ上げられ、ワッショイワッショイと胴上げされます。
独身女性が担がれると、良縁に恵まれるんだとか!?
私も、気づけばあっという間に高い位置へ持ち上げられ、普段は絶対に体験できない光景に驚きとワクワクで忘れられない瞬間になりました。
静けさと余韻に包まれて
山城神社に無事奉納が終わると、先ほどまでの賑わいが嘘のように、崎山の町は静けさを取り戻します。
真っ黒な煤を落とすのも名残惜しく感じます。
笑って、驚いて、煤をつけられて…五島の冬にしか味わえない体験が詰まった「へトマト」。
皆様もぜひ、この熱気と温かさを全身で感じて楽しんでみてください♪
この記事を書いた人

#ナガサキタビブ 部員(公式ライター)
たくさんの人に長崎の魅力を写真を通して伝えたい!
大自然あふれる五島で生まれ育ちました。
もっと沢山の人に五島の良さを伝えたい思いがあり、広告作成やマーケティングの勉強をした後、五島市にUターン。写真を撮ることが好きで、休日はカメラを持ち歩いてます。
長崎の魅力を写真を通してお伝えしていければと思っております!
